酒×イチゼン
名物店主がセレクト!日本酒王国新潟が誇る「幻の地酒」銘柄
酒蔵数は88蔵と日本一(2021年9月現在)の日本酒王国新潟。「淡麗辛口」のイメージが強い新潟の日本酒ですが、近年は味も香りも個性的な日本酒が次々と生まれています。
「最近は蔵元の蔵人の若返りもあって、先進的なチャレンジをする蔵元が増えています」と語るのは、新潟地酒を豊富に取り揃える「地酒防衛軍 吉川酒店」の店主・吉川章大さん。「地酒防衛軍」の名の通り、店内に並ぶ商品の90%が新潟地酒。ここにしかないレアな日本酒や、試飲サービス、お酒の量り売りといった取り組みと、何よりも店主のマニアックな日本酒トークが話題となり、県内外から多くの地酒ファンが足を運ぶ名物店です。
今回は、吉川さんに、日本酒王国新潟の地酒事情と、厳選した「幻の新潟地酒」を紹介していただきました。
目次
店主紹介
吉川酒店/吉川 章大
1971年新潟市生まれ。群馬県のスーパーマーケットで働いた後、24歳で帰郷し、家業の「吉川酒店」を継承。自ら酒蔵に足を運び、自分で飲んで美味しいと思ったお酒だけを扱っている。
――吉川酒店のはじまりを教えて下さい。
正確な創業年はわかりませんが、120年以上前から商売をしてきました。私で五代目です。昭和初期までは、今のように日本酒が瓶詰めされておらず、樽で仕入れた日本酒を量り売りしていました。お客さんは自分で徳利を持ってくるので「通い徳利」と呼んでいました。当時は酒屋が、いろんな酒をブレンドして売っていたんですよ。
――え!いろんな蔵のお酒を混ぜて売っていたんですか?
そうなんです。その時代は、お客さんの好みに合わせたブレンドができるかが酒屋の腕の見せ所でした。
――創業時からずっと日本酒販売にこだわってきたのでしょうか。
いえ、昭和30年年代中頃にビールが日本酒の消費量を抜くようになると取り扱いもビールが中心になっていきました。地域密着の酒屋は、お客様の要望に答えることが一番ですから。4代目だった父の頃はお店の中はビールだらけでした。
――今は店頭にビールはないですね。
1990年代後半に私が店を継いでから、少しずつ日本酒中心のお店にしていきました。
今でこそお酒はコンビニでも買えますが、昔はお酒を売るための免許は規制が厳しく、酒屋は競合がいない商売でした。私が店を継いだのがちょうど規制緩和が始まった頃で、ビールを売っていてもスーパーなどの量販店には敵わないのは目に見えていたので、なにか特徴を出さなければいけないと考えていました。
――日本酒に取り扱いを絞った理由は?
自分が日本酒好きというのが大きいです。それだけでなく、日本酒を売れば地域の蔵元や、米農家が潤います。しかも、酒米をつくるために稲作を続けることでその地域の生態系が守られ、自然を守ることにもつながる。日本酒を売ることで、5代に渡って家族を育ててくれた新潟という地域に恩返しができると思って、新潟の蔵元のお酒だけを扱うようになりました。
――マニアックな品揃えで人気ですが、仕入れ銘柄はどうやって。
家業を継ぐ前に、酒造りの現場を知りたいとワンシーズン蔵元で働きました。その後は、とにかく県内の蔵元に足を運び、実際に飲んで、美味しいと思ったものを仕入れるという作業を今も続けています。やはり現場を知るのが一番。蔵元の方とのコミュニケーションを深めながら、珍しい銘柄の取り扱いや、コラボイベントの企画などが実現しています。
――最近は新潟の日本酒はバラエティ豊かとのことですが。
新潟の日本酒といえば「淡麗辛口」が代名詞ですが、最近はそのイメージにとらわれない自由な酒造りをしている蔵元が増えています。デザートワインのような甘口のものから、スパークリング、フルーティーなものなど、一昔前では考えられないくらい面白い日本酒が出てきています。
――なぜ、新しいタイプの日本酒が増えてきたのでしょう?
日本酒の消費量が年々減ってきて、新しい市場を切り開く必要があるということ。さらに、蔵元に若い蔵人が増えてきて、作り手の世代交代が進んでいることが大きいと思います。
――新潟の蔵元の特徴はありますか?
蔵元同士の仲がよく、情報交換が盛んなのが特徴だと思います。普通、同業者はライバル関係だと思いますが、新潟で活躍する蔵人には、1984年に酒造技術者を養成するためにつくられた「新潟清酒学校」で学んだ方が多い。同じ場所で学んだからこそ仲間意識があり、蔵を超えて技術交換がされています。それが、蔵元が切磋琢磨してユニークなお酒が次々に生まれてくる土壌になっていると思います。
――日本酒に苦手意識を持っている人も少なくありません。なぜでしょうか?
苦手意識の多くは、学生時代に日本酒で失敗したり、最初に自分にあまり合わない味の日本酒を選んでしまったりといった、出会いの段階での悪いイメージが原因だと思います。ちゃんとした日本酒を選びさえすれば「日本酒ってこんなに美味しいんだ!」と感じられるはずです。
――日本酒はどう選べばいいでしょうか?
今は本当にいろんなタイプがありますから。自分に合った一本と出会えると、そのお酒を軸に日本酒の世界を開拓していけます。まずは酸味のある白ワインタイプや、甘いカクテルタイプなど自分の好きなお酒に近いタイプのものから試してみてください。
新潟県長岡市栃尾にある蔵元「越銘醸」が手掛ける『壱醸』は新潟県内特約店のみで販売される数量限定酒。吉川酒店ではリピート率No.1の銘柄です。
甘すぎず、辛すぎない絶妙なバランス。コクと奥行きのある味わいの旨口ながら、キレを感じる飲み口で、飲み手を飽きさせずスルスルと飲める万能タイプの日本酒です。
こだわりは、原料となる栃尾地域の棚田米。2004年の新潟県中越地震で壊れ、耕作放棄されてしまった棚田を、酒屋の有志が結成した「棚田の生き物を愛する会」が復活させ、新潟県生まれの酒米「越淡麗」を栽培。その酒米だけ使って仕込んだ、まさにまさに「壱(いち)から醸(かも)した」お酒です。
収量の少ない希少な棚田米を贅沢に精米。精米歩合50%の『壱醸 純米酒』、45%の『壱醸 純米吟醸』、さらに極限の21%まで磨いた『壱醸 21』をラインナップ。特に『壱醸 21』は雑味も一切なく、フルーティーさ、米の味わいを堪能できます。
おすすめの酒の肴はフライ。程よい辛さを持つ『壱醸』が、フライの油を流してくれます。おすすめの飲み方は、5〜10度の常温。香りを抑えながら、料理と『壱醸』のコラボレーションをぜひ味わってみてください。
【商品詳細】
『壱醸 純米酒』
・蔵元:越銘醸株式会社
・アルコール度数:16度
・精米歩合:50%
・販売価格(税込):1,980円(税込/720ml)
『壱醸 純米吟醸』
・蔵元:越銘醸株式会社
・アルコール度数:16度
・精米歩合:45%
・販売価格(税込):3,300円(税込/720ml)
『壱醸21』
・蔵元:越銘醸株式会社
・アルコール度数:16度
・精米歩合:21%
・販売価格(税込):5,500円(税込/720ml)
越銘醸 壱醸サイト
https://www.koshimeijo.jp/lineup-ichijo/
八恵久比岐は、「酒の良さをしっかりと伝えてくれる店にしか置かない」という想いから、新潟県でも9店舗のみでしか取り扱いのない限定酒です。
柿崎の空や、風を思い浮かべられるようにと、柿崎産の酒米、地元の名水「大出口泉水」を仕込み水に使うなど、8つのこだわりで造った銘柄です。
ブランドのベースとなる『八恵久比岐 土DAICHI』は香りや味のバランスが良く、飽きにくい日本酒。蔵人が栽培した「五百万石」を100%使用。強い癖はないので、料理全般に合わせられます。
「山田錦」を100%使用した『八恵久比岐 大吟醸 空』。上品な香りがあるにもかかわらず、余韻を残さずにすっと消える味わい。青空をイメージするため、ラベルや瓶などパッケージにもこだわりが。合わせたい料理はお刺身。透き通る日本酒とさっぱりとした魚の組み合わせの相性抜群です。
『八恵久比岐 純米大吟醸 風』は、上品な香りやコクがあり、余韻が残る日本酒。蔵人が栽培した「越淡麗」を100%使用し、徹底して手造りにこだわった純米大吟醸酒です。煮魚や焼き魚など、魚料理とよく合います。
【商品詳細】
『八恵久比岐 土DAICHI』
・蔵元:頸城酒造株式会社
・アルコール度数:15度
・販売価格(税込):1,320円(税込/720ml)
『八恵久比岐 純米大吟醸 風』
・蔵元:頸城酒造株式会社
・アルコール度数:16度
・精米歩合:47%
・販売価格(税込):1,870円(税込/720ml)
『八恵久比岐 大吟醸 空』
・蔵元:頸城酒造株式会社
・アルコール度数:16度
・精米歩合:47%
・販売価格(税込):1,870円(税込/720ml)
頸城酒造 八恵久比岐サイト
https://www.kubiki-shuzo.co.jp/product/hakkei
蔵元は新しい日本酒や技術開発のため、毎年「実験酒」をつくっています。少量タンクで仕込んだ実験酒は、生産量も少ないため例年はイベント等で振る舞い酒として消費していました。その実験酒の中から「これは!」と思う日本酒を吉川酒店がスカウト。地酒防衛軍の冠をつけて販売することにしました。実験酒はその年限りで二度と作られることがないかもしれないまさに幻の地酒です。
君の井酒造の実験酒『山廃純米 無濾過』は、山廃を常温の土蔵で寝かせた日本酒。まろやかな味わいが特徴です。
今代司酒造の実験酒『K’s Blend』は、12〜13種の純米酒をブレンドした日本酒。開けてから味わいが変化し、だんだんまろやかに。開栓から10日頃が一番の飲み頃という珍しいお酒です。
中川酒造の主力銘柄『越乃白雁』の改善のために試みた実験酒を地球防衛軍ラベルにした『越乃白雁 純米吟醸』。この実験では、口に残る味の余韻をスッと消えるようにと模索しました。狙い通りの出来栄えに、もしかしたら正式採用されるかもしれません。
【商品詳細】
・商品名:『山廃純米 無濾過』
・蔵元:君の井酒造株式会社(http://www.kiminoi.com/)
・アルコール度数:16度
・精米歩合:65%
・販売価格(税込):1,595円
【商品詳細】
・商品名:『K’s Blend』
・蔵元:今代司酒造株式会社(http://imayotsukasa.co.jp/)
・アルコール度数:14度
・精米歩合: 65%
・販売価格(税込):1,670円
【商品詳細】
・商品名:『越乃白雁 純米吟醸』
・蔵元:中川酒造株式会社(https://www.koshinohakugan.com/)
・アルコール度数:17度
・精米歩合:55%
・販売価格(税込):1,716円
蔵人が栽培する「一本〆」を使ったやわらかく香りもあるシリーズです。
高千代酒造の看板商品『高千代』は、さまざまな種類の新潟限定酒が出ることで知られる銘柄。一期一会となってしまう種類も多く、まさに幻の地酒です。
『高千代 純米酒 黒』の高温山廃仕込み由来の風味は、深みのあるまろやかな味わい。コクのあるお酒が好きな方にはぴったり。冷からお燗まで温度を変えて味わいの違いを楽しめます。
『高千代 純米酒 紫』は、鑑評会で金賞を受賞した「純米原酒」の造りをベースに開発した製品です。冷からお燗まで飽きのこない味わいが特徴です。
【商品詳細】
『高千代 純米酒 黒』
・蔵元:高千代酒造株式会社
・アルコール度数:15度以上16度未満
・精米歩合: 65%
・販売価格(税込):1,375円
『高千代 純米酒 紫』
・蔵元:高千代酒造株式会社
・アルコール度数:16度
・精米歩合: 65%
・販売価格(税込):1,375円
『高千代 からくち純米酒 プラス19 美山錦(オレンジ)』
・蔵元:高千代酒造株式会社
・アルコール度数:16度以上17度未満
・精米歩合: 65%
・販売価格(税込):1,210円
店主の吉川さんは、「ラベルの裏側にあるストーリーを伝えたい」と、お客さんと積極的にコミュニケーションを取って日本酒の魅力や、各蔵元のこだわりを伝えています。そんな日本酒愛あふれる吉川さんなら、日本酒好きでなくても、ワインやビールの好み、どんな料理と合わせたいか、どんな人に贈りたいか丁寧に聞き取りながら、オススメの日本酒を見繕ってくれます。車で来店していなければ、試飲も可能。自分で実際に味わってみてお気に入りの一本を探してみてください。
※今回ご紹介したお酒を購入ご希望の方は、吉川酒店(025-222-2832)にお問い合わせください。
Information
住所/新潟市中央区西厩島町2346
電話番号/025-222-2832
営業時間/9:00~20:00(土曜は10:00~19:00)
休み/火曜
リンク/地酒防衛軍吉川酒店Facebookページ